知能は知能でないものからどのようにして現れてくるのだろうか?
心がたくさんの小さなプロセスからできているという考え方を「心の社会」と呼ぶことにする。 そして、心を構成する小さなプロセス一つ一つを「エージェント」と呼ぶことにする。 こころのエージェントたちは、ひとつではまったく簡単なことしかできない。 しかし、ある特別な方法でいろいろな社会を構成すると、本当の知能にまで到達することが出来る。 心についてのどんな理論も、その理論がまともなら、すくなくとも3つの長さの時間が関係してくる。
1.脳の進化に関係してきた数億年というオーダー 2.何世紀というオーダーで数えられる、歴史的時間経過 3.赤ちゃんから子ども時代といった、すぐに過ぎ去るような数週間から数ヶ月、数年というオーダー
心とはなにかを説明するには、心ではないものから心がどのようにして作られるかを示さなければならない。 思考とか感情をまったく含まないものを素にして、心を説明できなければ循環論法におちいるだけである。
つまりエージェントというのはなんなのか? この問に応えるのに考えなければならない課題をまずあげてみることにしよう。
機能:エージェントたちはどのようにはたらくのか? 具体:エージェントたちは何でできているのか? 起源:最初のエージェントはどこから来たのか? 学習:どのようにして新しいエージェントをつくったり、古いエージェントを変えているのか? 役割:一番重要なエージェントはどんな種類のものか?またそんなものがあるのか? 権限:エージェント同士の意見が合わない場合、どうするのか? 意図:エージェントネットワークはどのようにして欲望や希望、意図をもてるのか? 自己:エージェントの集まりに統一性とかパーソナリティを与えるのはなにか? 意味:エージェントたちはどのようにして物事を理解するのか? 意識:エージェントたちはどのようにして自分自身に気づいたりすることができるのか?
一つ一つの問をみると、どれも難しい。 だとしたら、どんな心の理論を作れば、こうしたいろいろなことが説明できるだろうか。 たしかに、問をバラバラにしてみると、どれも難しそうにみえる。 しかし、心をエージェントたちの社会と見なせば、一つ一つの問への答えが、他の問への答えにつながっていくのである。