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4.利用 の変更点

教授の問題の話をもうすこし詳しく見てみよう。

彼の心のなかの「はたらく」というエージェンシーが、エージェント「怒り」を利用して、エージェント「眠る」のはたらきをとめようとしたということだ。
しかし、「はたらく」は、どうしてそんなおかしなやりかたを使わなくてはならなかったのか?
その理由をかんがえるために、べつのやり方はなかったのか見てみよう。
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まず、「はたらく」が「眠る」のスイッチを''直接''切れるとすると、我々の身体はすぐに疲れ切ってしまうにちがいない。
あた、「はたらく」が「怒り」のスイッチを''直接''入れられるとすると、私たちはいつも怒っていることになるに違いない。
直接そんなことができては危険過ぎる。きっと死んでしまうだろう。
じっさい「空腹」や「痛み」のスイッチを直接切れるような種は、早々に死滅するだろう。
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それよりも、必要なのはエージェントたちのチェックやバランス保持のメカニズムである。
ある一つのエージェンシーが他のエージェンシー全部のコントロールを握っていたとしたら、私たちは一日たりとも生き延びることはできないだろう。
私たちのエージェンシーが別のエージェンシーの機能を利用するために回り道を見つけなければならないのは、このためである。
直接的な接続は、進化の過程で取り除かれてきたにちがいない。
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またこれが、私たちが''幻想''や''作り話''というものをもちいる理由にちがいない。
怒ろうと決めても怒ることはできない、が、自分を怒らせるであろうものごとや状況を想像し設定することはできる。
ライバルを設定し、エージェンシー「はたらく」が、エージェント「怒り」が「眠り」を妨害する傾向を高めるために、ある特定の記憶を利用したのだ。
これが、自分をコントロールするのに使われる、典型的なやり方なのである。
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私たちが自分をコントロールする方法は、このように、たいてい心のなかで無意識的に進行するが、
いっぽうでは、意識的に自分に報酬を与えてくれるような方法をとることもある。
「この仕事がおわれば、休暇がとれるぞ」といったように。しかし、そんなふうに自分をごまかすのはそれほど簡単なことではない。
自分に影響を与えるのに使う方法は、他人を利用するのにつかう方法とそんなに違わない。
とくに、どちらもよく失敗がおこるということが似通っている。
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ではなぜ、自分に動機づけするやりかたは、ほとんどうまくいかないのだろうか?
それは、さきに見てきたように、直接的は結びつきが危険過ぎるからである。
もし自分をコントロールするのがかんたんに出来てしまっては、私たちは結局なにも達成できないままに一生を終えることになるだろう。

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**コメント [#t206b323]

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